ケーブル事故に関する測定法について教えてください。
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以下に説明いたします。

ケーブル事故点測定とは

1. 電力ケーブルの事故種類

電力ケーブルの絶縁破壊事故(以下,事故と云う)は,地絡,短絡および断線事故に大別され,またこれら事故が2種類以上複合する場合もあり,さらに1相,2相,3相と多相に渡ることもあります。
一方,地絡・短絡事故後の地絡抵抗なども0.1MΩ以下の低抵抗から数100MΩを越える高抵抗のものまで極めて広範囲におよんでいます。また高抵抗地絡の中には,事故ケーブルに高電圧を印加した焼成作業においても,事故点でアーク放電が間欠的に起こるのみで,容易に地絡抵抗が低下しないフラッシオーバ性の事故もあります。断線事故においても断線後の導体間抵抗が,数Ω程度の低い場合から数10Ωを越えるものがあり,かつ地絡事故を同時に起こしている場合もあります。以上のように,電力ケーブルでは多種多様な事故があり,これを測定するには,適切な事故様相判断と最適な測定器の選択が重要です。図1に事故測定フローチャートを示します。
事故測定フローチャート

図1 事故測定フローチャート

2. 事故点の電気特性

図2は一般の高抵抗地絡事故に高電圧を印加して事故点でアーク放電を起こさせ,地絡抵抗を低下させる直流焼成回路と事故ケーブルの近似的等価回路です。図中の限流リアクトルは,事故点でアーク放電が起こっても直流電流を100mA程度以下に制限するために挿入されています。図3に焼成時の電圧-電流変化モデルを示します。事故点で放電が起こる電圧より若干高い電圧に電圧調整器を停止した場合の電流-電圧特性を示したものです。
近似等価回路

図2 近似等価回路

(1)フラッシオーバ性事故(事故点で放電を繰り返す場合)

これは図3の第1の過程の場合で,ケーブルの印加電圧を徐々に高めていき事故点で放電が起こると,放電電圧値までにケーブル(C)に充電された電荷が放電と同時に事故点に流れます。この放電電流は,放電電圧をサージインピーダンスの1/2で除した値,すなわち数100A程度(放電電圧10kV,サージインピーダンス30Ωで600A程)以上となります。また,放電エネルギーは放電電圧の2乗に比例するので,放電電圧が高い長亘長のケーブルでは極めて大きなアーク放電が事故点で発生することになります。これによりケーブル絶縁体,シースなどが炭化し,炭化路が形成される反面,激しいアーク放電のために折角形成された炭化路は吹き飛ばされ,事故点の絶縁は回復します。すると,再び焼成電源よりケーブルに充電が始まり同様の過程を繰り返します。この場合,容易に地絡抵抗は低下しません。このような事故は,22kV級以上の長亘長のCV・OFケーブルの事故およびケーブル終端・中間接続部などの鉛筆削り部分に沿った箇所の事故に多いようで,地絡抵抗は数10MΩ以上になります。

(2)放電後,地絡抵抗が低下する事故(焼成可能な場合)

図3の第2から第3過程のもので,前述のようにケーブルの充電,放電を繰り返している間に放電電圧が低下し,同時に電流が上昇して遂には電圧が200~300V以下で,安定した電流が流れるようになる場合で,3300V~33kV級CV・PTA・SLケーブルの事故がこれに当たります。地絡抵抗数MΩ~100MΩ程度の事故に多いようです。なお焼成電流を停止してメガーなどで絶縁抵抗を測定すると数10MΩ以上に地絡抵抗が上昇する場合が多いので,通電中に測定できる測定法を選定することが望ましいです。

(3)低抵抗地絡事故(事故点でアーク放電が起こらず,地絡抵抗が低下する場合)

図3の第3の過程で,印加電圧を徐々に昇圧すると,1~2kV以下の電圧で事故点に小さな放電が起こった後,すぐ安定した電流が得られる場合で6600級以下のPTA・CVケーブルがこれに当たります。地絡抵抗5~7 MΩ以下の事故に多く見られます。以上のようにケーブル事故点の電気特性はかなり複雑で,(2)項の状態のものが時間経過とともに(1)項の状態に戻ったり,また(3)項の状態が急に(2)項のように変化する場合も多々あります。さらに,ケーブル線路の布設状況(直接埋設,管路布設などの差異,およびケーブル線路の水分の有無など)によっても大きく変化します。
焼成過程の電圧・電流変化モデル

図3 焼成過程の電圧・電流変化モデル

常時監視による瞬時事故区間測定
※FSD(FAULT SPAN DETECTOR)

電力ケーブルに於ける事故時(地絡)に生じる電流情報を光磁界センサなどを用い常時監視しその情報処理により事故の区間判別を行うものです。

1. 光磁界センサ

光磁界センサは,ファラデー効果を利用したもので,図4に示すように磁界がセンサに加わると磁界強度に比例して直線偏光された光の偏光面が回転します。回転角θは(1)式で表されます。
θ=2vHL・・・(1)
ただしv:ベルデ定数(deg/cm・Oe),H:磁界の強さ(Oe),L:ファラデ素子の光路長(cm)
この回転角θを測定することによって事故時の電流が検出できます。
光磁界センサ動作原理

図4 光磁界センサ動作原理

2. システム構成

電流検出部,電流検出ユニット,および判別ユニットの3部分より構成されます。システムブロック図を図5に示します。
システムブロック図

図5 システムブロック図

電流検出部
光磁界センサとリングコアからなり,事故時の電流を検出し電流波形を光ファイバにより電流検出ユニットへ伝送します。リングコアは事故電流により発生する磁界を周回積分するもので,コアのギャップ部の磁界を光磁界センサで検出するものです。
電流検出ユニット
光源,受光部から成り,電流波形をO/E変換します。
判別ユニット
電流波形をA/D変換し,大きさ,位相の比較を行うことにより事故区間の判別を行います。また,電流波形情報を記憶するとともに全システムの自己診断機能も有するものです。電流検出部は所定の各位置に取り付けられ,各ユニットは電源の供給を受ける場所に設置します。
なお,ユニットと電流検出部は6km程度離れている場合においても対応できます。

3. 測定原理

区間判別の対象とする位置に電流検出部を取付け,各検出部からの電流情報のうち大きさ,位相などから地絡,区間内外および事故区間判別を行うものです。Y分岐線路におけるシステム構成例(4区間判別)を図6に示します。
<このシステムは
東京電力株式会社様との共同研究により開発したものです>
システム構成図

図6 システム構成図

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