地中線や回転機などの絶縁診断についても教えていただけますか。
以下に説明いたします。

地中線・回転機総合絶縁診断装置について

高度情報化社会の発展に伴い,電力供給の高信頼度化・高品 質化が強く要望されています。このような社会の要請に応えるため,その保守管理すなわち地中線,電気機器の絶縁性能の的確な把握による予防保全が重要な課題となっています。
これからの絶縁診断は送電中に単一の測定方法により的確に診断できることが 理想的ですが,劣化要因,劣化の形態などの多様性を考慮すると一種類の測定のみにより,適切な判定を下すことは不可能と考えられます。
地中線用および回転機用として手動操作方式とパーソナルコンピュータを搭載した自動方式のいずれでもシステム化が可能です。また,地中線用装置では事故測定装置を併設することにより万一の事故時にも速やかな復旧が可能となります。従って,当社はそれぞれの設備の特徴を考慮し,できる限り合理的なシステムを構築しています。

地中線総合絶縁診断装置

地中線総合絶縁診断装置(車)は3300V~77kV地中線の各種診断に用いるもので,絶縁診断装置または,これと事故点測定装置を車両に搭載したものです。地中線への接続は車載された測定ケーブルにより安全かつ容易に行えます。車両の積載能力・形状は,搭載する装置の質量・形状,乗車定員および走行ルートや使用場所などの条件により決まります。

(1) 絶縁診断装置について

地中線の絶縁診断法に商用周波試験電圧を用いることは線路の静電容量が大きいため試験電源装置の質量・形状が大形となりフィールドでの試験が容易に実施できる方法ではありません。そこで商用周波数にかわる試験法として,準三角超低周波法,充放電法が開発され小型車両に搭載できるよう実用化され,直流電圧と共に部分放電試験電圧の一種類として用いられています。また,直流漏れ電流試験用電源装置の電圧発生方式は,商用周波昇圧方式に加えて発生電圧安定度の優れた高周波方式も用いられています。

(2) 放電後,地絡抵抗が低下する事故(焼成可能な場合)

事故時の事故様相の主要をなす抵抗性地路およびフラッシオーバ性事故の測定を容易に実施するために高圧ブリッジと放電検出型パルスレーダの採用は不可欠です。

(3) 測定ケーブルについて

診断装置と地中線の接続は車両後部に搭載された数種類の測定ケーブルにより行います。搭載できる測定ケーブルの長さは巻取ドラムに与えられる搭載スペース,測定ケーブルの種類によって決まり,通常は50m程度搭載できます。

(4) 車両について

車内の測定操作環境すなわち冷暖房,操作スペースおよび補助椅子を利用した簡易ミーティングスペースの確保などを考慮した場合,25人乗り程度のマイクロバスまたは3t中型車両を用います。
また,ビルの地下や狭い路地などの公道に駐車して使用することも考慮した設計の場合,2t小型車を用います。この場合,小型車の利点が生かされて機動性に優れた診断車となります。

回転機総合絶縁診断装置

本装置は3kV~18kV級回転機巻線の絶縁診断に用いるもので,直流絶縁診断装置,交流絶縁診断装置および測定ケーブル台板状に取付け測定現場での機器間配線を不要にした回転機総合絶縁診断装置です。台板ごと車載固定することにより絶縁診断車として使用することが出来ます。

(1) 直流絶縁診断装置について

直流1000Vの電圧により絶縁抵抗を測定する方法と,直流1~20kV程度の電圧を用い充電および放電時の電流を測定する2つの方法があります。後者の場合, 高電圧の充電と放電を行うため装置内漏れ電流の少ない充放電装置が必要です。

(2) 交流絶縁診断装置について

3kV~18kV級回転機巻線の交流絶縁診断を行う試験電圧は回転機の系統電圧により決まるが,一般的に1.9~20kVです。
この電圧を印加するための試験電源装置容量が5~150kVAと大容量で,試験現場での電源確保(200V,750A)が困難になることも考えられます。
そこで本装置では補償リアクトルの採用により,試験電源装置の出力が,例えば150kVAと大容量でありながら受電容量が出力の約1/10である 15kVA程度に低減できます。補償リアクトルは試験用変圧器1次巻線に並列に接続する,低圧側並列補償方式を採用しています。また高圧側直列共振方式を採用することにより低歪率な試験電圧の試験電源装置を構成することも可能です。

(3) 測定ケーブル・高圧端子台について

診断装置と回転機巻線の接続は高圧ケーブルと接地線の2本により行います。搭載できるこれらのケーブルの長さは通常100m程度です。また,高圧端子台は高圧ケーブルの接続替えが簡単に実施できるよう設けてありますが,油中絶縁式の自動切換形にすることも可能です。他に,連絡用インタホン,高電圧インタロックなどの制御を行うための複合ケーブルも準備されています。

(4)車両について

試験電源装置の質量が大きいため,車両は3~4t中型車両を用います。自動方式のためにパーソナルコンピュータを搭載した場合は冷暖房設備は必要不可欠です。

パーソナルコンピュータによる自動化

試験電源装置,測定機器を総合的に監視・制御し,地中線および回転機絶縁診断装置を対話式簡単操作の自動形装置にシステムアップします。これに必要なプログラムはユーザ仕様にあわせ,個別設計で対応します。以下に回転機自動絶縁診断装置回路構成例とソフトウェア仕様概要・使用効果を示します。
回転機自動絶縁診断装置 装置構成例

ソフトウェアの仕様概要と自動化効果

(1) 測定データの管理

  • データの保管・削除
  • 報告書の印刷
  • データの参照
  • データベース化による設備管理
  • データの統計管理

(2) 測定結果の判定方法

  • 良否2値化による判定
  • 複数要素による段階的な判定

(3) 自動化実施による効果

  • エキスパートの養成不要
  • 予防保全管理の効率化
  • 設備改修計画の効率化
  • 試験時間の短縮
  • 設備停止時間の短縮
部分放電測定装置について

診断装置 Q&A