線路の運転を停止せずにケーブルの絶縁診断はできるのでしょうか。
線路の運転を停止せず,活線でケーブルの絶縁診断を行う方法があります。従来の絶縁診断は,線路の運転を停止し,ケーブルの絶縁状態を評価しています。この停止測定は,結果的に問題の無い多くの線路も,計画的に停止して測定することになります。そこで,ケーブルの劣化状態を把握することができれば,大幅なケーブル保守作業の効率の向上が図れます。
高圧ケーブル線路のシース絶縁抵抗とシールドの断線検出を測定することで,ほとんどの劣化ケーブルを検出することができます。

活線シース絶縁抵抗測定

シース絶縁抵抗が低下すると,ケーブルの絶縁体に水が浸入し,水トリー発生の要因となる可能性があります。このシース抵抗を活線で測定することにより,外部からの水の浸入による水トリー発生を未然に防止します。
シース絶縁抵抗の判定基準は以下の通りとなります。
シース絶縁抵抗値判定
1MΩ以上良好
1MΩ未満要注意
図1に示すように,片端接地回路の3相一括接地地点に商用電圧用コンデンサを挿入して,シースに直流電流を流し,電流・電圧を測定して抵抗値を表示します。
シース絶縁抵抗測定原理図

図1 シース絶縁抵抗測定原理図

活線シールド抵抗測定

高圧ケーブルの単心ケーブルやトリプレックスケーブルの場合,遮蔽層銅テープが腐食等により破断すると多くは絶縁破壊に至ります。また,破断部で放電し,発煙,発火,燃焼に至る場合もあります。
遮蔽層銅テープが破断すると,遮蔽層の電気抵抗が数kΩ~∞となります。遮蔽層の抵抗値を活線で測定することによりこのような事故を未然に防止することができます。
シールド抵抗の判断基準は以下の通りとなります。
シールド抵抗値判定
50Ω/km未満良好
50Ω/km以上要注意
図2に示すように,黒相-赤相間の抵抗を測定する場合,黒相-赤相間のシールド線に直流電流を流し,電流・電圧を測定して抵抗値を表示します。切替スイッチで黒相-赤相,赤相-白相,白相-黒相を選択して測定できます。
シールド抵抗測定原理図

図2 シールド抵抗測定原理図

活線絶縁体抵抗測定

高圧ケーブルの絶縁体に水が浸入し、ボイドや突起部に電界が集中すると水トリーが発生しケーブル絶縁体の抵抗値が低下し、地絡事故につながります。
ケーブルの絶縁体抵抗を活線で直接測定することによりケーブルの劣化状態を把握することが出来ます。
測定結果判定措置
10,000MΩ以上良好1年以内のインターバルで測定
10,000MΩ未満
3,000MΩ以上

(要監視)
6ヶ月以内のインターバルで測定
トレンド監視が望ましい
3,000MΩ未満
1,000MΩ以上
要注意3ヶ月以内に再測定(トレンド監視)
精密診断の実施が望ましい
1,000MΩ未満重注意同上およびケーブル更新準備(検討)
図3に示すように、運転中線路に直流50Vを系統のEVT中性点から重畳し、(ケーブル導体~絶縁体~遮へい層)へ漏れ流れる電流にて測定します。
図3 活線絶縁体抵抗測定原理図

図3 活線絶縁体抵抗測定原理図

診断装置 Q&A