部分放電測定について知りたい。
以下に説明いたします。

部分放電測定の原理

電動機・コンデンサ・ケーブルなど電気機器の絶縁体中に微小な空隙状欠陥などがあると,その部分に電界が集中し,微弱な放電が発生します。これが部分放電とよばれ,これにより絶縁体が劣化され,長時間後には絶縁破壊に至ることがあります。このような部分放電に伴う微弱なパルス信号を測定することにより,絶縁欠陥を調べるのが部分放電測定です。
“部分放電”とは
「電極間に電圧を加えたとき,その間の絶縁物中で部分的に発生する放電をいい,電極間を完全に橋絡する放電は含まない。※1」
※1 JEC-195-1980部分放電測定一般より引用

この放電の様子を回路で表すと,図1のようになります。

部分放電測定の原理1

図1 内部放電

また,絶縁体の内部に限らずに,絶縁体の表面の放電,あるいは空気につつまれた高圧充電部でも同様な現象が発生します。これらを,図2,図3に示します。これらをさらに一般的な等価回路にすると,図4のように表されます。

部分放電測定の原理2

図2 沿面放電

部分放電測定の原理3

図3 コロナ放電

部分放電測定の原理4

図4 部分放電の等価回路

部分放電測定器では供試体中の部分放電による電荷量を検出インピーダンスに発生する電圧として捉えます。供試体で電荷量Qの部分放電が発生した場合に検出インピーダンスZの両端に発生する電圧は供試体静電容量,結合コンデンサ静電容量,検出インピーダンス及びその周波数特性などにより簡単に計算で求めることはできなく,また,供試体が分布定数回路の場合はさらに複雑になります。このため図5に示すように,校正すなわち既知の電荷量を供試体に注入して測定器の感度調整を行うことが一般的に行われています。

部分放電測定の原理

図5 部分放電の校正・測定回路

Q:供試体で発生する部分放電電荷量
Z:検出インピーダンス
Vd:部分放電により検出インピーダンスに発生する電圧
Ck:結合コンデンサ
Qcal:校正時に注入する既知の電荷量
Ca:供試体静電容量
Cb:供試体欠陥部分に直列に挿入される静電容量
Cc:供試体欠陥部分(ボイド等)の静電容量

部分放電測定の原理

部分放電測定回路の基本構成は図6に示す通りで,増幅器の特性により低周波法,同調法および広帯域法に分けられます。これら各種測定法の基本特性を表1に示します。

(1)広帯域法

パルスの波形を忠実に増幅しようとした方法であり,波形観測に適しています。しかし,増幅帯域が広いことにより雑音の影響を受けやすく,パルスの伝搬による減衰量が大きいという短所のため,現在ではあまり使用されていません。

(2)同調法

共振増幅器を使用した方式であり,パルス波形は減衰振動波形になります。増幅帯域が狭いために雑音の影響が少なく,増幅度も大きくできます。しかし,発電機,変圧器,ケーブルなどの分布定数供試体では,減衰振動波形の反射波との和動,差動により,部分放電の発生位置に応じて,周期的に測定感度が変動するという同調増幅器固有の応答があります。

(3)低周波法

広帯域法と同調法の中間のものであり,広帯域法よりは狭い増幅帯域をもち,同調法のようにパルス波形を振動させてはいません。雑音は比較的少なく,放電の発生位置による測定感度の差が小さいため,発電機,変圧器,ケーブルなどの分布定数供試体では,この方式が一般的に用いられています。
部分放電測定の原理

図6 部分放電測定回路

表1 各種部分放電測定法の基本特性

測定方法広帯域法低周波法同調法
狭帯域同調法中帯域同調法
検出インピーダンスCR,またはLCRと並列に
変成器結合
インピーダンス
Rと並列に
変成器結合
同調インピーダンス
Rと並列に
変成器結合
同調インピーダンス
増幅回路の帯域幅f1:数kHz
f2:数MHz
f1:5~10kHz
f2:150~200kHz
f0:200~数MHz
⊿f:10kHz
f0:400kHz
⊿f:90kHz
パルス分解能0.1~10μs20~30μs200μs25μs
指示装置パルス計数計
パルス波高値計
オシロスコープ
パルス計数計
パルス波高値計
オシロスコープ
パルス波高値計
オシロスコープ
パルス波高値計
オシロスコープ
基本的な測定量Q,n
放電パルス波形
Q,n
パルスの極性
Q
RIV値
Q,n

Q:放電電荷 n:発生頻度 f0:同調中心周波数 ⊿f:帯域幅 f1:下限周波数 f2:上限周波数

部分放電測定装置について

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